ロッキング・オンが開催しているゴールデン・ウィークのJAPAN JAM、真夏のROCK IN JAPAN FESTIVAL、そして年末のCOUNTDOWN JAPAN。私たちはこれら3つの大きなフェスを総称して「Jフェス」と呼んでいます。
Jフェスが通常の形で開催できなくなってすでに1年半以上が経過しました。言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大がその理由です。猛威を振るう感染症の前で音楽フェスという興行モデルはとても脆弱だったことを思い知らされています。
唯一開催できた今年のJAPAN JAMは、キャパシティをそれまでの3万人から1万人まで縮小して行いました。その現場で私たちはたくさんのことを学びました。それを教えてくれたのは参加者の皆さんでした。あらゆるエリアでのディスタンスの確保、声出しの禁止、その他たくさんの制約がある中で、このフェスを守るのは自分たちである、という参加者の強い覚悟と当事者意識が今年のJAPAN JAMを成功させてくれたのだと思います。今まで私たちは「フェスは参加者が主役」と言い続けてきました。主役である参加者からこのフェスはどう見えているのだろうか、私たちは常にそれを考えながらフェスを作ってきました。しかし今年のJAPAN JAMでは、まさに参加者が参加者の意志と決意によってコロナ禍での音楽フェスの在り方を示してくれたのです。本当に心強かったです。
いろいろな経緯によりROCK IN JAPAN FESTIVALがそれに続くことは出来ませんでした。とても残念でしたし、自分たちの力不足を感じました。この状況下で世の中の誰からも安全安心を認められる形式を確立できなかったことの責任を感じています。
新型コロナウイルスの感染状況は拡大と縮小を繰り返し一進一退が続きます。当面の間、2019年以前のようなフルスペックでのフェス開催は見通しが立たないのが現実でしょう。それがいつまで続くのか今はわかりません。
全国各地で行われるフェスも、その中で様々な試行錯誤を繰り返しています。頑張って開催を実現したフェスもあるし、断念せざるを得なかったフェスもあります。私たちはその全てをリスペクトし、応援するつもりです。ただ、残念ながら運営方法で賛同できないフェスがあったのも事実です。それは私たちにとって、フェスが存在する意義を根本から考える機会でもありました。
その上であらためてロッキング・オンは、これからの持続可能なフェス開催の形式を模索したいと思います。
絶対に、音楽を止めない。フェスを止めない。この状況下で強く思います。
今年のJAPAN JAMの会場では、参加者の皆さんがルールをきちんと守った上で久しぶりのフェスを思い思いに楽しんでくれました。朝、会場に向かってくる参加者の姿を見たとき、ライブの最初の音が鳴って湧いた拍手を聞いたとき、参加者のマスク越しでもわかる笑顔を見たとき、本当にこのフェスを開催してよかったと思いました。こんなに幸福な空間はほかにはない、そう思いました。だから私たちはJAPAN JAMを成功に導いてくれた参加者の皆さん、会場に居なくてもそのアクションに賛同してフェスを守りたいと思ってくれた皆さんと共に、音楽フェスを止めない方法を探り続けたいと思います。
時々の状況に対応したルールやシステム作りを行います。キャパシティの上限も都度変わっていくでしょうし、対応してステージ数、出演アーティスト数も変わるでしょう。ワクチン接種証明の提示や事前のPCR検査の実施も検討しています。引き続きたくさんの制約の中での開催となります。ぜひご協力いただきたいと思いますが、こんなフェスは自分たちが好きだったロッキング・オンのフェスじゃない、そんな反発もあるかもしれません。それは引き受けていくしかないと思います。
本来、フェスは本当に自由なものです。ライブを観る場所も、どのライブを観るかも、楽しみ方も人それぞれです。フェスならではの空間がそこにはあります。ロッキング・オンのフェスに参加してくださっている皆さんが、その「自由」を毎回作り出してくれました。
「自分の自由を守るために他人の自由を尊重する」。これは20年以上の時間をかけて参加者から学ばせてもらい生まれたフレーズです。毎回会場のビジョンに流し続けています。今、様々な困難を目の前にして、あらためて強く思います。
目の前に迫っているCOUNTDOWN JAPANに関しては、ここで書いてきたことを踏まえて近々詳細を発表できるよう、最終の調整に入っています。
音楽を止めない。フェスを止めない。
これから、ぜひ一緒に新しいJフェスの形式を作っていただけたらと思います。
2021年10月5日
株式会社ロッキング・オン・ジャパン